”もの忘れ”は、アルツハイマー型認知症の代表的な認知機能障害ですが、これは、いつ、どこで、誰と、何をした、といったエピソード、行為や体験そのものを忘れてしまうことです。ただし、ある日、朝、目が覚めたら、このようなもの忘れがいきなり出現するということにはなりません(もし、あれば認知症以外の病気を考えるべきです)。”歳のせい?”と思われるもの忘れの延長上に、このような病的なもの忘れが出てきます。病的なもの忘れかどうかは、半年、1年と時間経過を追いながら、まるで扇のように、もの忘れが広がっていくかどうか、がポイントになってきます。

”ものわすれ”だけではない

計画力(段取り力):情報統合、目標設定、計画、柔軟性、抑制

  • 何から手をつけていいか悩む
  • もたもた、何度も確認
  • 何をするにも時間がかかる
  • 行き当たりばったり
  • 予想外の展開になると混乱、いらいら

注意力:選択、持続、転導、多方面、感度

  • 多くのことを言われると混乱してしまう
  • 周りが騒がしいと、会話に集中できない
  • 集中して物事に取り組めない
  • 些細な事でいらいらする
  • すぐ飽きる、続かない

 

 もの忘れが本当に現れてくる前に、段取り力や注意力の低下が目立つ方も少なくありません。物事の段取りが悪くなると、日常の作業をしようとしても何から手をつけていいか悩み、もたもたし、今までよりも時間がかかるようになったりします。要領も悪くなるので、予想外のことが起こると混乱したり、怒り出したり、気分の不安定さにもつながっていきやすいです。
 注意力が落ちてくると、物事に取り組むにも根気がなくなったり、すぐに飽きたり、周囲のざわつきで容易に集中力が途切れてしまうこともあります。覚えるべき事柄にきちんと注意が向けられず、そもそもきちんと覚えられないから、一見純粋にもの忘れがあるように見えてしまいます。
 このような状態にあっては、仕事や家事や趣味などで、些細なミスが見られるようになります。ただ、これらは歳とともに衰えやすい認知機能でもありますので、このようなエピソードがあるからといって、すぐに認知症だ!とは言えません。

そして、認知症の大部分の方は生活をスムーズに送っていくための”道具”を以前のように自由自在に使いにくくなります。例えば、電話番号をちょっと覚えるとき、デパートに行った時にフロア案内図をちょっと覚えるときがあるでしょう。そのとき、まるで頭の中の付箋に電話番号を書いたり、案内図を写して、いっとき覚えて、実際に電話をかけたり、フロア内を移動するわけです。認知症が進んでくると、このような付箋の枚数が減ったり、うまく貼りつかなくなってしまいます。辞書もそうです。頭の中には様々な知識として辞書がしっかり備えつけられています。ジャンル別に整理整頓されて。しかし、これも認知症が進むと、次第に辞書が減ってきたり、スムーズに頭の中の辞書を取り扱うことが難しくなってきます。
 このように様々な”道具”が私たちの頭の中にはあるのですが、認知症を抱えていく中で、少しづつ”道具”が使いにくくなり、日常生活をこれまでとかわらず送るために大変苦労することになります。