下関学術講演会の報告について

いまいせ診療センター/認知症センターより水野裕先生をお招きして、「医療・介護現場でパーソン・センタード・ケアを実践するために」というテーマでの講演会が開催されました。

先生の著書を購読し、異なる講演内容で以前に2度ほど聴講させていただきました。聴講の度に「トム・キッドウッド」が提唱する『パーソン・センタード・ケア』の奥深さを痛感するとともに、現在も試行錯誤の日々を送っています。

質問をされる末次院長水野裕先生座長 をされる中山医師

今回の講演のなかに「本当に彼らが問題を起こしているのか」という問いがありました。私はすぐにトム・キッドウッドの『5つの問いかけ』が頭をよぎりました。認知症の人の行動・心理症状の出現をどう捉えるか、看護の視点として中核症状を踏まえた上で、周辺症状が出現する要因や背景を客観的にアセスメントして環境を整えること、スタッフも環境の一側面であることなど再認識することができました。また、認知症を持つ高齢者が様々な行動で何かを伝えようとしていることを、スタッフが理解する努力を惜しんだことで、認知症の人の行動・心理症状を誘発する原因になりかねないと気付く必要があると痛感しました。

医学や遺伝子を勉強したトム・キッドウッドが〔認知症を持つ人の潜在的ニーズ〕として、『Love‐愛‐を中心とし、①くつろぎ、②自分が自分であること、③結び付き(愛着・こだわり)、④たずさわること、⑤共にあること』と挙げた5つの内容は私たちも含めて、生きていくことへの必要不可欠な事柄であることを忘れてはいけない。そして、全人的な理解「一人の価値ある人間として」とあるのですが、これは医療法人水の木会の理念である『全人的な医療の実践』と相通じるのではないでしょうか。

患者の主訴が軽減でき、ご家族共に安心していただけるように、水野裕先生の著書から紐解けていけたらと思います。「倫理の四原則」「德の倫理」などの基本を忘れずに、主治医、師長と共にチームナーシングを通じて再確認しながら、トム・キッドウッドのパーソン・センタード・ケア(オールドカルチャーからニューカルチャー)の考えを実践に繋げていきたいと思います。

看護部 桝井昌子